カシャボ

カシャボ
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ウィキペディアより画像引用
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9C


紀伊和歌山県三重県

紀伊の山奥にいたとされる妖怪。
紀州には吉野川をはじめする川があるが、そこに棲んでいる河童をドンガス、ガオロなど、いろいろな呼び名があった。
そして、河童が冬になって山奥に入るとカシャボという妖怪になると言われ、これが時々、民家にもやってくるらしい。
頭は芥子坊主、青い衣を着た六、七歳くらいの子どもの姿で、家の戸口に灰をまいておくと、水鳥のような足跡を残すので、カシャボが来たことがわかる。頭を振ると、ガチャガチャ鳴るそうである。
一見、害がなさそうだが、つないでいた馬を隠したり、牛によだれをつけて病気にするなど、牛馬に害を加えるとも言われている。ときには家の外で石を打ちつけ、来たことを知らせるなど、河童同様、いたずら好きの印象が強い。

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吉野川は、和歌山では紀の川とも呼ばれ、奈良県の大台ケ原を源流とする、延長136キロの壮大な川です。
http://www.city.wakayama.wakayama.jp/shisei/1009206/1009399/1002807.html

カシャボは、紀伊の山奥に棲む妖怪とテキストに取り扱われてますが、もし吉野川周辺なら、紀伊も北部、大阪や奈良寄りになります。紀伊半島は広大なので、北と南では紀氏と熊野氏、紀伊国牟婁郡でかなり文化や風土も違うので、分けたい気持ちになります。

そういうわけで、分布を調べるため、
怪奇・妖怪伝承データベースで検索してみました。
http://www.nichibun.ac.jp/YoukaiDB/search.html

すると、「カシャンボ」で16件の文献がヒットしました。
田辺市西牟婁郡大塔村みなべ町日高郡、本宮町、と出てきます。いずれも和歌山県南部です。

テキストの、紀州には吉野川を始めとする川がある、という文章とカシャボを引き寄せて読んでしまいました。なので、カシャボは吉野川にいるのかと早合点しそうでした。
しかしテキストの意味するところは、
紀州には吉野川を始めとする川がたくさんあること
紀州の川にはカシャボがいること
の2つの文であり、分布から考察するとカシャボが紀の川に出たとはされていないように思います。

また、大塔村の文献がありますが、これは奈良県大塔村ではなく、和歌山県田辺市大塔村であり、やはり、カシャボは牟婁郡の妖怪と考えて良さそうです。

河童が山に入ってカシャボとなる点は共通しているので、そのような妖怪と思って大丈夫に思います。ただ、河童の呼び名がドンガス、ガオロと別れており、細かく考えると地域差による呼び名と、カシャボの元の姿に違いを見いだせると思います。牟婁郡の醍醐味を大変に満喫できると思います。が、今回はバッサリと切り捨てて、カシャボに焦点を当てて考えていきます。

カシャボは、基本的にはテキスト通り、いたずらをする妖怪で、命をとったりするほどの危害は加えないようです。ただ夕方かくれんぼをすると、カシャンボにさらわれるとはいわれているようです。
その姿は、毛むくじゃらの人などとは記載されてますが、テキストのように、芥子坊主、六、七歳くらい、青い衣という言葉は見つかりません。
青い衣の出典は、江戸時代の作者不明な方の化け物尽くし絵巻からきているようです。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%96%E3%81%91%E7%89%A9%E5%B0%BD%E3%81%8F%E3%81%97%E7%B5%B5%E5%B7%BB

ただカシャボは青い衣を着ているから青く塗ったとする以外にも、江戸時代のことですから、他にも青い衣の妖怪を描いているため、塗料の無駄を避けるためについでに青く塗ったという可能性も、僕の頭には去来します。

六、七歳の姿といいますと、身長120センチくらい、体重23キロくらいです。
https://www.glico.co.jp/boshi/futaba/no80/con03_03.html
小学一年生で、ピカピカのランドセルに大きさで負けそうになりながら背負ってるくらいの背丈です。
そんな子が山で突然現れたら。不気味ですねぇ。

データベースの中で、特にオモチロイ!と感じたものは2つありました。
ひとつは、一本だたらとまざってしまっているもの。
http://www.nichibun.ac.jp/YoukaiCard/2180167.shtml

もうひとつは、シシャンボの葉をくれるというもの。
http://www.nichibun.ac.jp/YoukaiCard/1460996.shtml

妖怪から食べ物をもらえるとは、大変興奮しますね。
なおこのシシャンボ、実在の植物のようです。
https://www.uekipedia.jp/%E5%B8%B8%E7%B7%91%E5%BA%83%E8%91%89%E6%A8%B9-%E3%82%B5%E8%A1%8C/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9C/?mobile=1

和歌山でも分布しており、和製ブルーベリーとも呼ばれ、実を食べることも多かったことが想像されます。
http://zasshonokuma.web.fc2.com/sagyo/si/shashanbo/shashanbo.html

ただカシャボがくれるのは、シシャンボの実ではなく葉っぱなので、はてさて、親切心なのかいたずらなのか・・・。ちなみにブルーベリーの葉っぱは固くて食べるには適さないと感じました。(実体験)

未だに妖怪は和歌山で信じられており、平成16年、2004年に地元の新聞でも報道されています。

カシャボ、または一本だたらの足跡と思われるもの
https://www.wakayama-u.ac.jp/news/2017041900013/

【まとめ】
カシャボは、和歌山(紀伊)の妖怪
河童のドンガス、ガオロが冬になると山に入り、カシャボとなった
頭は芥子坊主、六、七歳の姿で青い衣を着ている。
頭を振るとガチャガチャ音がする
戸口に灰をまいておくと、水鳥のような足跡が残り、カシャボがきていたことがわかる
家の外で石を打ち付け、来たことを知らせるなどいたずら好きの様子
一見害はなさそうだが、馬を隠したり、牛によだれをつけて病気にするなど、家畜に害をなすことがある